語源・由来|「洒落」「蜃気楼」 由来をたどると見えてくる歴史
意味は知っていても、使われている漢字の由来を知ると、言葉の意味がさらにおもしろく感じられることもあります。今回は、「洒落」と「蜃気楼」、この二つの語源・由来をご紹介します。
意味は知っていても、使われている漢字の由来を知ると、言葉の意味がさらにおもしろく感じられることもあります。今回は、「洒落」と「蜃気楼」、この二つを見ていきましょう。
洒落
着ているものや身につけているもの、またはスタイルなどが垢抜けている人を「オシャレ」と呼びますよね。この言葉を漢字で書くと、「お洒落」となります。同じ漢字を使った「洒落」には、人を笑わせるという意味もあります。どちらも「洒」と「落」から成り立つ単語ですが、どうしてこの言葉が「垢抜けている人」や「人を笑わせる」という意味を持つようになったのでしょうか。
洒落という言葉は、長い間日光にさらされて白っぽくなるという意味を持つ「晒る(さる)」と、たわむれるという意味を持つ「戯る(さる)」、この同じ読み方をする二つの言葉が語源だといわれています。そして「晒る」の意味が転じて、「洗練された」「趣や風情がある」という意味を持つようになったのだとか。
「晒る」の読み方が「しゃれ」になったのは、室町時代以降だといわれています。そして、「洒落」という漢字が当てられた理由としては、心がさっぱりとしていて物事にこだわらないという意味を持つ漢語「洒落(しゃらく)」と、意味と音が似ていたからという説があります。この漢字が使われるようになったのは江戸時代前期以降で、洒落に接頭語の「お」が付いた「お洒落」が使われるようになったのは、江戸時代後期頃だと伝えられています。
人を笑わせたり、気が利くという意味も持つことから、言葉遊びの一種である「ダジャレ」も、漢字で書くと「駄洒落」となり、同じ「洒」「落」という言葉が使われています。
また、ふざけてたわむれることを「じゃれる」といいますよね。この言葉の由来も、実は洒落と同じ「戯る」が語源で、平安時代から使われている言葉なのだそうです。
蜃気楼
蜃気楼とは、大気中の温度・密度の差によって光が屈折し、遠くの風景などが逆さまになったり浮き上がったりするという現象です。富山県魚津市で見られることがよく知られていますが、「蜃気楼」の由来をたどってみると、古代中国の歴史に関わりがある言葉だということがわかります。
蜃気楼という言葉は、中国・漢の時代に司馬遷(しばせん)によってまとめられた歴史書「史記」の中の、天文・気象について記された「天官書」の一節に登場します。それは、「海旁蜃気象楼台」=「海旁(海のそば)の蜃の気は楼台(=高い建物)を象(かたど)る」という一文。「蜃」という生物が吐き出す息で楼台(ろうだい)、つまり高い建物を出現させたという意味です。「蜃」とは大きなハマグリ、または竜の一種である蛟(みずち)だという説があります。この話から、空に浮かび上がる不思議なものを「蜃気楼」と呼ぶようになったといわれています。そしてハマグリと竜のどちらも「蜃」と呼ばれていたため、両方が蜃気楼を作り出す生物と伝えられるようになったそうです。
「史記」の中に記されていることから、この書物が編纂された時代にはすでに蜃気楼は人に認識されていたことがわかります。紀元前100年頃のインドの書物「大智度論(だいちどろん)」でも蜃気楼に関する記述があり、日本でも元禄10年(1697年)に成立した軍学書「北越軍談」の中にも、戦国大名である上杉謙信が蜃気楼を見たという逸話があるなど、歴史にかかわる書物にも蜃気楼についての話が残されているんですね。
言葉の由来をたどると、とても深い歴史を知ることができるので、ぜひみなさんも調べてみてはいかがでしょうか。
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