郷土料理|ちまき 端午の節句のお菓子は地域色豊か
端午の節句の行事食といえば「かしわ餅」に「ちまき」などを想像します。しかし、このちまきは地域によって材料も形も違っているのをご存じでしょうか。お雑煮のレシピと同じように、ちまきにも“地域差”があります。今回は、さまざまな地域のちまきについてご紹介します。
端午の節句の行事食といえば「かしわ餅」に「ちまき」などを想像します。しかし、このちまきは地域によって材料も形も違っているのをご存じでしょうか。お雑煮のレシピと同じように、ちまきにも“地域差”があります。今回は、さまざまな地域のちまきについてご紹介します。
そもそも「ちまき」とは
■もち米を材料とし、茅(ちがや)や笹の葉、竹の皮で包んだ餅菓子
粽(ちまき)は、もち米を材料とした餅菓子の一種。昔、茅(ちがや)の葉で餅を巻いたことからこの名前になったとされます。中華料理でちまきといえば、もち米を肉や野菜と一緒に醤油味で炒めて蒸し、竹の皮で包んだものが知られていますが、この餅菓子のちまきも中国から伝わったとされています。
■武士の携帯食であったことから端午の節句の行事食に
水に浸して保存しておけば2~3日食べられるなど、保存に優れ持ち運びしやすいちまきは、戦国時代の武将たちに携帯食として食べられてきました。このことから、端午の節句に男の子のお祝いをする慣習が生まれた江戸時代に、「武将のようにたくましく」という願いを込めてちまきを食べるようになったといわれています。
地域色豊かな各地のちまき
ちまきは、地域によって材料や作り方などにさまざまなバリエーションが見られます。いくつかご紹介しましょう。
■笹の葉を用いる新潟県のちまき
新潟県で食べられているちまきは、笹の葉を2枚使って三角形に巻くもので、「三角ちまき」や「トンボちまき」といわれています。包んだちまきを縛るのには、昔から雨をしのぐ蓑(みの)や菅笠(すげがさ)などにも使われてきた植物「菅(すげ)」の茎が用いられます。新潟県で笹を使うお菓子といえば、戦国武将の上杉謙信が兵糧にしたという「笹団子」が知られていますが、そのルーツはちまきにあるのではないかという説もあります。ちなみに三角に包まれたちまきは、東北地方の南部などでも食べられているそうです。
■長野県ではちまきに朴葉(ほおば)が使われる?
朴葉焼きや朴葉寿司などの郷土料理が有名な長野県の一部では、米粉と砂糖を練った皮で餡を包み、朴葉で細長く包んで蒸すというお菓子「朴葉巻き」が見られます。朴葉巻きのルーツは朴葉に米を包んでゆでる「朴葉飯」だといいますから、ちまきとかしわ餅の両方の特徴を持っているといっていいでしょう。
■関西地方のちまきは細長い円すい型
関西地方で食べられているちまきは、笹や葦の葉で餅菓子を包んでイ草で縛ったものが主流。特徴的なのはその形で、ひょろりと長い円すい型になっています。中身のお菓子も、他の地方のように砂糖やきな粉をまぶして食べるものだけではなく、餅自体に砂糖を練り込んだものや、くず菓子、小豆あんなどが入ったものもあるようです。
■鹿児島県のちまきは切り分けるほど大きい!
鹿児島県、宮崎県、熊本県南部など南九州のちまきといえば、別名「あくまき」のこと。一晩灰汁に漬けたもち米を竹の皮で細長い枕のような形に包み、灰汁で数時間煮込んで作ります。新潟のちまきが真っ白なのに対して、こちらのちまきはべっこう飴のような色。水分が多くもちもちで、冷めても固くなりません。1本は羊羹ひと棹よりも一回り大きいほどのサイズで、切り分けて砂糖やきな粉をまぶしながらいただきます。実はこのちまきも、薩摩藩の猛将こと島津義弘が関ヶ原の戦いに兵糧として持参したといわれています。
ひとくちに「ちまき」といっても、その姿や材料、いわれなどは地域によってさまざま。今年の端午の節句は、地元の味だけでなく、遠い地方の食べたことがない「ちまき」を用意してみるのも楽しいかもしれませんね。
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