語源・由来|「助六ずし/バッテラ」 寿司にまつわる語源
新鮮な生魚を使った握りずしはもちろんおいしいものですが、一方で、巻きずしやいなりずし、押しずしなどの庶民的なすしには、いつ食べても安心できるおいしさがあります。今回は、歌舞伎がネタ元の「助六ずし」と、ポルトガル語が語源の「バッテラ」、そしてすしには欠かせない「ガリ」についてもご紹介します。読んだあとに早速食べたくなるかもしれません。
新鮮な生魚を使った握りずしはもちろんおいしいものですが、一方で、巻きずしやいなりずし、押しずしなどの庶民的なすしには、いつ食べても安心できるおいしさがあります。今回は、そうしたすしにまつわる名前の意外なルーツをご紹介します。読んだあとに早速食べたくなるかもしれません。
歌舞伎がネタ元 「助六ずし」
巻きずしといなりずしをセットにした「助六ずし」。コンビニやスーパーにもそろえてある、定番品です。ところで、なぜ、この取り合わせを助六と呼ぶのでしょうか。実は、洒落の効いた粋な由来があるのです。
歌舞伎十八番のひとつに「助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」、略して「助六」という演目があります。主人公の助六は源氏の宝刀「友切丸」を探すために、吉原で客にケンカをふっかけては刀を抜かせようとしています。その助六と恋仲になる遊女の名前を「揚巻(あげまき)」といい、彼女に横恋慕している意休という男が「友切丸」を持っていると気付いた助六が、ついには刀を取り返すというストーリーです。実は「助六ずし」の名のそもそもの由来となったのは、主人公ではなく、ヒロインの「揚巻」のほうなのです。「あげ+まき」の名前が、油揚げの「揚げ」、巻きずしの「巻き」と重なることから、いなりずしと巻きずしのすし折りを「助六ずし」と呼ぶようになったといいます。別の説では、助六は紫のハチマキを頭に巻いていることから、助六を巻きずしで表し、揚巻をいなりずしに見立てたともいいます。
庶民的で飽きないおいしさの「助六ずし」。愛され続ける秘密は、江戸の粋を集めた演目「助六」にあやかったこの名前にもあるのかもしれませんね。
ポルトガル語が語源 「バッテラ」
〆サバの押しずし「バッテラ」は、大好物という方も多いのではないでしょうか。ところで、バッテラというのも不思議な響きの名前で、どことなく日本語らしくありません。いったいなぜ、このような名前がついたのでしょうか。
バッテラが日本語らしくない響きなのは当然のこと。というのも、ポルトガル語で「小舟、ボート」を意味する「bateira(バッテーラ)」がその名の由来だからです。押しずしといえば大阪が有名ですが、バッテラもまさにこの地の生まれ。明治26年、大阪のすし店「鮓常」の中恒吉(なか つねきち)が考案したといわれます。実はもともとはサバではなく、コノシロのすしにつけられた名前でした。しっぽのピンと上がった様子がボートに似ていたところから「バッテラ」と名付けられたといいますが、のちに、コノシロの値が上がったことからサバで作られるようになり、やがて、〆サバの押しずしのことを「バッテラ」と呼ぶのが一般的になりました。
バッテラは、塩と酢で〆たサバの身を薄く切ってすし枠に並べ、酢飯を詰めて押して抜きます。仕上げに合わせ酢で煮た白板昆布をのせるのですが、この白板昆布の透明感のある美しさ、独特のうま味がサバと好相性で、バッテラをいっそうおいしくしてくれます。見事な組み合わせを考えだしたすし職人の知恵に脱帽するしかありません。
身近なすしの名前の由来、いかがでしたか。最後にもうひとつ、すしにまつわる名前の由来をご紹介。すしに添えるしょうがの甘酢漬けを「ガリ」といいます。なんとこの名前、「ガリガリと噛む」ところからついたのだとか。すしにまつわる名前の由来、いろいろ調べてみるとおもしろいですよ。
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