語源・由来|「水無月/あんばい」 梅雨の季節に気になる語源
6月から7月にかけての雨の多い時期を「梅雨」といいます。 その名の由来は、梅の実が熟す季節と雨期が重なっているからとか、カビの生えやすい時期の雨が「黴雨(ばいう)」と名付けられ、のちに漢字が変わったなどの説があるそうです。今回ご紹介する、雨の多い6月の異称「水無月」や、加減・具合のことをいう言葉「あんばい」も、語源は「梅雨」の季節に関係するものです。
6月から7月にかけての雨の多い時期を「梅雨」といいます。その名の由来は、梅の実が熟す季節と雨期が重なっているからとか、カビの生えやすい時期の雨が「黴雨(ばいう)」と名付けられ、のちに漢字が変わったなどの説があるそうです。「梅雨」については、以下の記事もあわせてお読みください。
今回は、梅雨の季節に知っておきたい言葉の語源を探ります。
梅雨の時期なのに水が「無い」とは? 「水無月」
日本で昔から使われている、睦月、如月、弥生といった月の異称。6月の異称は「水無月」といいます。しかし、6月といえば雨の多い時期。それなのになぜ「水の無い月」というのでしょうか。
そもそも水無月は「陰暦」6月の異称です。陰暦は現在の暦と1カ月ほどのずれがありますから、陰暦6月の水無月にあたるのは、今でいう梅雨のあけた頃にあたります。では、梅雨があけて暑いから水無月なのでしょうか。実は、「水無月」の「無」は「ない」という意味ではなく、連体助詞の「な」であり、水無月とは「水の月」の意味で、陰暦6月は田に水を引く季節だから水無月というようになったといいます。ちなみに、神無月の「無」も同様で、神様がいない月という意味なのではなく、神をまつる月だから「神の月」という意味なのだそうです。
水無月の語源には諸説あり、そのなかには、梅雨明け後の暑さで水が枯れるから「水無月」となったという説もあります。また、平安時代の歌学書『奥義抄』では、農事がみな、しつきてしまうから「みなしつき」といったのを誤った、としています。
2018年の夏は猛暑で雨が少なく、各地で水源が乏しくなり、水田の水も足りなくなるのではと心配されました。その一方で、豪雨被害も深刻でした。陰暦6月の異称、水無月の由来には、諸説ありますが、水が気がかりになる時期であることは今も昔も変わりありません。
塩と梅酢から生まれた言葉 「あんばい」
加減、具合のことをいう言葉「あんばい」。大変便利な言葉で、「汁物のあんばいをみる」というように料理の味加減のことを指し、「お天気のあんばいも良いから出かけようか」といえば物事の具合や調子を指し、「最近、体のあんばいが今ひとつだ」などと体の健康状態をいう時にも使います。また、「適当にあんばいしておけば大丈夫だ」など、物事の具合、様子を考えて、程よく物事を並べたり、整え、処理したりする時にも使います。
漢字では、塩梅、按排、案配、按配などの字をあてます。そのうちのひとつ、「塩梅」のもともとの読み方は「えんばい」でした。「塩梅」とは調味料の塩と梅酢のことです。味の基本は、甘、鹹(塩味)、苦、酸、辛の五味であるといわれ、そのなかでも基本となるのは、塩味と酸味といわれます。この酸味を出すのに、よく使われたのが梅酢でした。そこから、食物の調味に使われる塩と梅酢を「塩梅」というようになり、また、味加減のことも「塩梅」というようになりました。
一方、程よく物事を並べたり、処理したりすることを指す「按排」という言葉はもともと別にありました。しかし、「塩梅(えんばい)」と「按排」は、どちらも「良い加減に整える」という似た意味をもっていて、音も似ていたために、2つの言葉は混同されるようになりました。近世には、「塩梅」は「あんばい」と読まれるようになっていたようです。そして現在、「あんばい」は、味加減から、物事の具合や調子、健康状態のことまで、さまざまな加減、調子を表す言葉となりました。
「塩梅」の言葉のもととなった「梅酢」。「あんばい」の語源を知ることで、この調味料のありがたみがいっそう感じられるのではないでしょうか。梅雨どき、空の「あんばい」を見ながら、梅仕事をされる方々のご苦労には頭が下がります。今年の梅仕事もどうか、うまくいきますように。また梅酢は市販品もありますから、時には梅酢を食事にとりいれ、健康増進をはかってみてはいかがでしょうか。
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