温泉|湯河原温泉(神奈川県) 名だたる文豪も愛した古来の名湯
箱根連山と相模湾に挟まれた神奈川県湯河原町の湯河原温泉は、万葉集に詠まれた古くからある温泉地です。温泉観光地として名高い箱根町、熱海市と隣接しながらも、長らく秘湯として親しまれ、与謝野晶子、鉄幹夫妻、志賀直哉、島崎藤村など名だたる文豪たちも訪れました。今も昔ながらの温泉旅館が立ち並ぶ、風情あふれる温泉街の趣を残しています。
箱根連山と相模湾に挟まれた神奈川県湯河原町の湯河原温泉は、万葉集に詠まれた古くからある温泉地です。温泉観光地として名高い箱根町、熱海市と隣接しながらも、長らく秘湯として親しまれ、今も昔ながらの温泉旅館が立ち並ぶ、風情あふれる温泉街の趣を残しています。
川沿いに、2つの県にまたがる温泉の街が
写真提供:湯河原町
湯河原の温泉街は、箱根の大観山(たいかんやま・たいかんざん)の麓から相模灘へ流れ込む千歳川沿いに続いています。この千歳川は神奈川県湯河原町と静岡県熱海市の県境となっていますが、静岡県側の川沿いにも「伊豆湯河原温泉」と呼ばれる温泉街があり、さながらひとつの温泉地のようになっています。
明治以降は特に文豪たちに愛され、与謝野晶子、鉄幹夫妻、志賀直哉、島崎藤村といった名だたる面々が、湯河原温泉に湯治や静養に訪れました。中でも芥川龍之介は「トロッコ」、「一塊の土」、「百合」といった短編、夏目漱石は絶筆となった「明暗」で湯河原を舞台とし、国木田独歩は「湯河原より」、「湯河原ゆき」といった短編を残しています。
特に国木田独歩の作品によって温泉地・湯河原は多くの人の知るところとなり、「湯河原ゆき」の一節は、万葉公園にある独歩の文学碑にも刻まれています。
やさしい泉質が特徴の湯河原温泉
写真提供:湯河原町
湯河原温泉の泉質は、保温効果の高い弱食塩泉、そして肌をなめらかにする効果のある弱アルカリ性。古くから打撲や切り傷、神経痛や婦人病などの湯治に用いられてきた“薬師の湯”なのです。温泉のお湯は、成分内容によっては石鹸が泡立ちにくくなることもありますが、湯河原温泉のお湯は無色透明で泡立ちもよく、湯冷めしにくいといわれます。
サスペンス小説の大家・西村京太郎が湯河原温泉を終の棲家(ついのすみか)と定めたことはよく知られています。他にも著名人が別荘を構えたり、お忍びでやってくるといわれる場所だけあって、温泉街には風格あふれる旅館が立ち並んでいます。
その一方で、温泉街の中ほどにある町営の日帰り温泉「こごめの湯」(写真)をはじめとする日帰り温泉施設もあり、大浴場や露天風呂でそのやさしい泉質のお湯を気軽に味わうことができます。
ツボを刺激しながらの足湯「独歩の湯」
写真提供:湯河原町
「こごめの湯」から歩いて約3分、千歳川沿いにあるのが、万葉集に登場する数多くの植物が植えられた緑地公園「万葉公園」。先述の国木田独歩の歌碑や、湯河原温泉の湧き出る様を熱い恋情になぞらえて詠まれた、万葉集の和歌「足柄の土肥の河内に出づる湯の世にもたよらに子ろが言はなくに」の歌碑、温泉の神様としてあつく信仰されている湯権現熊野神社などがあります。
ここで見逃せないのが、独歩の文学碑の奥に広がる足湯施設「独歩の湯」。日本列島をイメージした園内に、体内の内分泌と代謝異常、そして骨と関節と足に効果があるという「脾骨(ひこつ)の泉」や、心穏やかになるなごみの泉こと「平静の泉」など、足裏のツボにちなんだユニークな名前の足湯が9つも設えられています。ゆったり腰掛けたり、歩いて足裏への刺激を楽しみながら、万葉の植物が織りなす緑の眺めを楽しめる温泉スポットです。
歌碑にもなった国木田独歩「湯河原ゆき」の、「湯河原の渓谷に向かった時はさながら雲深く分け入る思があった」という一節は、独歩が最後に湯河原温泉を訪れた時のことだといわれています。有名な温泉地となった今も、どこか雲を分け入った先のような風情が漂い続けるこの場所で、そのやさしいお湯を味わってみてはいかがでしょうか。
※掲載されている情報は平成28年12月現在のものです。
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