
文豪ゆかりの地|室生犀星ゆかりの地・金沢(石川県) 文豪が思い続けた故郷の面影を辿る
「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」という有名な一節を残した詩人・小説家の室生犀星(むろおさいせい)。犀星自身の故郷は石川県金沢市、日本海に注ぐ「犀川」のほとりでした。今回は、室生犀星ゆかりの地、文豪が思い続けた故郷の面影を辿ります。
「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの」という有名な一節を残した詩人・小説家の室生犀星(むろおさいせい)。犀星自身の故郷は石川県金沢市、日本海に注ぐ「犀川」のほとりでした。

画像提供:金沢市
故郷ゆかりの名を名乗り続けた室生犀星
徳田秋聲(とくだしゅうせい)、泉鏡花(いずみきょうか)とともに「金沢三文豪」に数えられる室生犀星。明治22年の生後間もなく生家近くの千日山雨宝院(せんにちざん うほういん)に引き取られ、後に養子となります。12歳で働き始め、上司の手ほどきで俳句を始めた犀星は、「犀川(さいがわ)の西で育った」ことから犀星(西を同音異字の星にした)を名乗るように。やがて明治の終わり頃、志をもって上京します。
当初はなかなかうまくいかず、金沢に戻ってはまた上京を繰り返していたという犀星。かの「ふるさとは~」の詩は、このころの故郷に対する複雑な思いを込めたものだともいわれています。
生家跡には「室生犀星記念館」

画像提供:金沢市
現在、犀星の生家跡にはその生涯と作品について知ることができる「室生犀星記念館」があり、犀星が幼い頃を過ごした界隈ということもあって、多くの愛読者が訪れています。ゆかりの品や著作の初版本、直筆原稿や書簡など豊富な資料が展示されており、作家としての功績はもちろんその人となりにも触れることができます。特に、犀星の全著書の表紙を年代順に展示した“心の風景”は圧巻です。
画像提供:室生犀星記念館
住所:石川県金沢市千日町3-22
電話番号:076-245-1108
営業時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休日:12月29日~1月3日、ほか展示替え期間
拝観料:一般300円、高校生以下無料ほか
千日山雨宝院

画像提供:金沢市
記念館と共に訪れる人が多いのがこちらの雨宝院。犀星が養子となって育てられた、高野山真言宗の古刹(こさつ)です。
犀星の初期作品にはこちらがモデルとされる描写がいくつも見られ、「幼年時代」に登場したお地蔵様、「性に目覚める頃」でモデルとなった賽銭箱、犀星が愛した杏の木などが今も残されています。犀星自身の封書や初期の掲載誌などの資料も公開されていて、故郷をこよなく愛し続けた犀星の、まさに原風景を知ることのできる貴重な場所です。
住所:石川県金沢市千日町1-3
電話番号:076-241-5646
営業時間:9:00~18:00
休観日:本尊祈願会の縁日(10日)
拝観料:大人300円、中学生200円ほか
“犀星のみち”をたどって文学碑へ

画像提供:室生犀星記念館
雨宝院を出たら、ぜひすぐそばの犀川大橋を渡り、山の方へ向かってしばらく川沿いを歩いてみてください。
この犀川大橋から隣の桜橋までの道は“犀星のみち”と呼ばれ、春は桜、夏は川で夕涼み、冬には向こうに連なる雪山を望み……と、四季折々の魅力をたたえる遊歩道。右岸(雨宝院の向こう岸)には、流し雛をかたどった犀星の文学碑があり、代表作『抒情小曲集(じょじょうしょうきょくしゅう)』「小景異情」より杏の詩が刻まれています。
犀星が幼い頃から慣れ親しんだ道を同じように歩き、在りし日の犀星に思いをはせるのも、素敵な旅の締めくくりとなるのではないでしょうか。
上京当初こそ金沢との行き来を繰り返した犀星ですが、後年、文壇で成功した後に故郷へ戻ることはあまりなかったのだそう。その一方で、犀川の写真を大切にしていたといわれています。自作の通り、「遠きにありて」思い続けた犀星とその故郷。作品の端々に現れる望郷の思いを噛み締めながら歩いてみれば、金沢のまた違った一面が浮かび上がってくるかもしれません。
※掲載されている情報は平成28年4月現在のものです。
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