郷土料理|焼鯖そうめん(滋賀県湖北地方) 娘への親の愛情、もてなしの心がこめられた郷土料理
滋賀県湖北(こほく)地方の「焼鯖そうめん」は、美しくまとめられたそうめんに、あめ色の鯖(サバ)がのった、見た目のインパクト大な郷土料理です。焼鯖を煮付けた煮汁でそうめんを炊き合わせるので、鯖の出汁と甘辛いしょう油ベースの味わいが絶品。観光客にも人気のメニューのひとつです。
滋賀県湖北(こほく)地方の「焼鯖そうめん」は、美しくまとめられたそうめんに、あめ色の鯖(サバ)がのった、見た目のインパクト大な郷土料理です。焼鯖を煮付けた煮汁でそうめんを炊き合わせるので、鯖の出汁と甘辛いしょう油ベースの味わいが絶品。観光客にも人気のメニューのひとつです。
※湖北地方…長浜市、米原市。滋賀県の北東部に位置し、全面積の23%を占める。
鯖のうまみが染み込んだ、甘辛味のそうめん
焼鯖そうめんは、焼鯖をしょう油と砂糖をベースにしたタレでやわらかく煮込んだあと、その煮汁でそうめんを煮て、一緒に盛り付けます。鯖とそうめん、一見不思議な組み合わせですが、同じタレで鯖もそうめんも煮込むことによって、一体感のある味わいに。
しっかり味がついているので、つけ汁は不要です。ゆずや七味唐辛子、山椒などの薬味を加えて、味に変化をつけながら食べるのも楽しい一品。濃い味付けなので、飲食店ではご飯とセットで供されて、おかずのように食べるのがポピュラーです。
嫁いだ娘に届く親の愛情
湖北地方では5月になると農家に嫁いだ娘のもとへ、親が焼鯖を届ける「五月見舞い(春見舞い)」という風習がありました。春の田植えの時期は、農作業に家事にと女性は大忙し。そんな娘を案じた親の愛情がこもった習わしです。ちなみに秋には「秋見舞い」といって塩マスを届けることもあったそう。
農繁期でもシンプルな手順で作ることができて、つけ汁いらずでパッと食べられる。濃い味付けも農作業で疲れた身体にはちょうどいい塩梅だったのではないでしょうか。
田植えの時期にはお米の備蓄が少なくなる家もありましたが、保存食のそうめんは豊富にあったため、このそうめんの食文化が根付いたとされています。
また、4月に行われる「長浜曳山まつり」の客人をもてなすごちそうとしても焼鯖そうめんは欠かせません。このお祭りは「日本三大山車(だし)祭り」のひとつに数えられ、一週間も続きます。久しぶりに故郷に戻った人たちも、この時期にはなつかしい焼鯖そうめんに舌鼓を打つのでしょう。
なぜ?海がないのに“鯖料理”
滋賀県はご存じのように、周囲をぐるりと他県に囲まれた海のない場所に位置しています。娘に焼鯖を贈る風習をご紹介しましたが、琵琶湖の魚ではなく、なぜ鯖なのでしょうか?
その昔、日本海で獲れた鯖は、琵琶湖の西岸を通って京都へ向かうルートで輸送されており、この道中は「鯖街道」と名付けられました。湖北地方にも鯖街道の支流がのびていたので、昔から湖北地方では鯖は一般的な食材。そのため、鯖を使った郷土料理が生まれたのです。
鯖街道の起源は1200年以上前とされ、鉄道や自動車が普及する前の時代には、行商人が徒歩で京都まで鯖を運んでいたのだとか。保冷技術がなかったため、鯖は塩でしめられ陸路を渡り、京都に到着するころにはちょうどいい塩加減に。塩じめの鯖は京都の庶民に親しまれていたそうです。
鯖街道は、山道や旧道が混在するため必ずしも一致しませんが、今の国道27号や国道367号あたりに相当します。その名残なのか、今でも鯖街道の起点である福井県小浜(おばま)市や国道367号沿線には、焼鯖や鯖寿司のお店が軒を連ねています。
焼鯖そうめんは、一年を通して湖北地方の飲食店で食べられます。鯖の風味がしっかり染み込んだそうめんは、他では出会えない味わい。焼鯖はとってもやわらかく煮込んであるため、大きな骨以外は全部食べられます。「長浜曳山まつり」を見に行くなら絶対に食べておきたい、あと引くおいしさです。
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