
間違いやすい日本語|「やぶさかでない」「まんじりともせず」 人の様子を表す言葉
昔から使われ続けている言い回しのなかには、現代では誤解されやすいという言葉もあります。今回は、間違いやすい言い回しの「やぶさかでない」と「まんじりともせず」をご紹介します。どちらも人の気持ちや様子を表す言葉です。
昔から使われ続けている言い回しのなかには、現代では誤解されやすいという言葉もあります。今回は、人の気持ちや様子を表す、間違いやすい言い回しをご紹介します。
喜んで?仕方なく? 「やぶさかでない」

「頼まれればやぶさかでない」のように使う「やぶさかでない」という言葉。どのような意味で使用するのが正しいかご存知でしょうか。次の質問は、平成25年度の「国語に関する世論調査」(文化庁)で実際に出題されたものです。
問. 「協力を求められればやぶさかでない」という一文において「やぶさかでない」はどのような意味でしょうか?
2. 仕方なくする
答えは、1の「喜んでする」です。「やぶさかでない」は、「喜んで~する」「~する努力を惜しまない」という意味なのです。この言葉、先述の「国語に関する世論調査」では、正しく答えられた人は33.8%のみでした。
「やぶさか」は思い切りの悪い、ためらう、物惜しみするけちな、未練がましい様子のことです。漢字では「吝か」と書きますが、「吝」を用いた「吝嗇家(りんしょくか)」という言葉も、まさに「けちな人」という意味なのです。
語源をたどると、「やぶさか」は、平安時代の言葉「やふさがる(物惜しみする)」「やふさし(けちである)」に由来します。「やふさ」に接尾語の「か」がついて「やふさか」になり、やがて「やぶさか」になったといわれています。
つまり「やぶさかでない」とは「けちるつもりはない」「惜しむ気はない」という気持ちを表した言葉であり、「喜んで~する」「~する努力を惜しまない」という意味になります。
「やぶさかでない」は、「やる気がある」ことを控えめな表現で主張する言葉ですが、少々遠回しな言い方でもあるので、「仕方なく」という間違ったニュアンスで伝わる可能性もあります。誤解されないように使う時には注意したいものです。
動かないのか、眠らないのか 「まんじりともせず」

「まんじりともせず、一夜を明かした」のように使われる言葉「まんじりともせず」。この言葉は、いったい「何を」しないことなのでしょうか。
問. 「まんじりともせずその時間を過ごした」という一文において、「まんじりともせず」はどのような意味でしょうか?
2. 眠らないで
答えは、2の「眠らないで」です。「まんじりともせず」は「少しも眠らないで」という意味。この質問も、平成25年度の「国語に関する世論調査」で実際に出題されたものなのですが、本来の意味である「眠らないで」と答えた人は、なんと、28.7%のみでした。
「まんじり」とは「ちょっと眠るさま」のこと。多くは、打消しの語を使って、「まんじりともせず(ちょっとも眠らないで)」「まんじりともしない」という言い方をし、「昨夜はあまりの暑さにまんじりともできなかった」などと使います。打消しの語を使わずに「まんじり」を使用する場合は、「じっくりと見つめるさま」「まじまじ」という意味や、「何も手につかないでいる様」という意味になります。
「まんじりともせず」という言い回しが使われるシーンは、本来ならじっと眠っているべきである夜のシーンや状況で使われることが多くなります。そのため、「何もしない」「じっと動かない」という意味として読んでも、文脈に不自然さが出にくく、誤用されることが増えたのかもしれませんね。
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