間違いやすい日本語|「憮然」「したり顔」 人の様子を表す言葉
「空気を読む」「顔色をうかがう」という言葉があるように、日本には、人の挙動や表情から思いを読み取る文化があります。そのためでしょうか、人の様子を表す言葉も数多く存在します。しかし、動作やその意味するところを間違えてとらえていることも実は少なくありません。今回は、そうした人の様子を表す、間違えやすい言葉「憮然」と「したり顔」をご紹介します。
「空気を読む」「顔色をうかがう」という言葉があるように、日本には、人の挙動や表情から思いを読み取る文化があります。そのためでしょうか、人の様子を表す言葉も数多く存在します。しかし、動作やその意味するところを間違えてとらえていることも実は少なくありません。今回は、そうした人の様子を表す、間違えやすい言葉をご紹介します。
怒っている?がっかりしている? 「憮然」
「憮然としてため息をついた」「憮然としながら立ち去った」という一文、いったいどういう気持ちなのかわかりますか?
問. 「憮然」とはどういう様子を表した言葉でしょう?
2. 腹を立てている様子
正解は1の「失望してぼんやりとしている様子」です。「憮然」は、失望、落胆して、どうすることもできないさまやぼんやりしている様、意外なことに驚きあきれているさまのことをいいます。平成19年度「国語に関する世論調査」では2の「腹を立てている様子」を選んだ人が70.8%をしめ、本来の意味で正答した人は17.1%しかいませんでした。
多くの人が間違えて覚えているこの言葉の意味を正しく覚えるためには、漢字のなりたちを見てみるといいでしょう。「憮」の漢字を分解すると、「心+無」となります。心が無くなる、つまり、失意する、というのが「憮」の意味なのです。ここから、憮然とは「がっかりするさま」「しょんぼりするさま」であることがわかります。
ちなみに、「こころがなくなる」と聞いて、もうひとつ思い浮かぶ漢字がありませんか。「心+亡」で作られる漢字がありますよね。それは「忘」と「忙」です。「忘」は「心から記憶がなくなる」こと。「忙」は「おちついた心がない」ことをいいます。
言葉の意味に迷ったら、漢字の作りに立ち返るのはおすすめの方法。正しい言葉の使い方のために、ぜひ覚えておいてください。
「したり」とは「してやったり」 したり顔
「したり顔で彼は話した」というときの「したり顔」。いったいどんな気持ちの顔なのでしょうか?
問. 「したり顔で話した」の「したり顔」の意味は?
2. 知ったかぶりの顔、よく知っているという顔
正解は1の「うまくやったという顔つき、得意そうな様」です。「したり顔」とは思い通りになって得意そうな顔のことをいいます。
「したり」というのは「知った」という意味はありません。「したり」は「~をする」という行動を行う意味の動詞「す(為)」が語源で、「す(為)」の連用形「し」に完了の助動詞の「たり」をつけたのが「したり」なのです。
かつては、失敗したときや、驚いたときに「これは、したり」といいました。ニュアンスとしては「しまった!」とか「やっちゃった…」という感じですね。また、成功したときにも、「したり」といったのです。こちらは「うまくやった!」とか「してやったり」というニュアンスです。
「したり顔」とは、「成功」した場合の顔。言い換えれば、「してやったりな顔」なのです。
近年「どや顔」という言葉がよく使われるようになりました。「どや」は、関西の方言で「どうだ」と相手の気持ちをたずねるときの言葉、ひいては、自分のなしとげたことを自慢げに威張るようなときに使う言葉なのですが、「どや顔」はまさに「したり顔」「得意顔」のこと。時代は変われど、得意満面な顔を表現する言葉が、日常使いの言葉から生まれてきているというのはおもしろいことですね。
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