
間違いやすい日本語|「早起きは三文の徳」「犬も歩けば棒に当たる」 勘違いしやすいことわざ
古くから言い伝えられてきたことわざ。風刺や教訓を込め、絶妙な比喩を用いた教えの深さは、現代にも通じるものがあります。しかし、言葉の短さから、ことわざが生まれた時代の風物が現代ではなくなっていることなどから、違う意味にとられることもあるようです。今回は、そうした勘違いされやすいことわざ「早起きは三文の徳」と「犬も歩けば棒に当たる」を紹介します。
目次
古くから言い伝えられてきたことわざ。風刺や教訓を込め、絶妙な比喩を用いた教えの深さは、現代にも通じるものがあります。しかし、言葉の短さから、ことわざが生まれた時代の風物が現代ではなくなっていることなどから、違う意味にとられることもあるようです。今回は、そうした勘違いされやすいことわざを紹介します。
どのくらいの徳? 「早起きは三文の徳」

「早起きは三文の徳」ということわざは、朝早く起きると良いことがある、という意味です。「徳」は「得」とも書き、また「朝起きは三文の徳」という言い方もあります。では、三文の徳、とはどのくらいの徳なのでしょうか。
問. 「早起きは三文の徳」の徳はどのくらい?
2. 少しだけ
正解は、2の「少しだけ」です。「早起きは三文の徳」とは、たくさん得する、ということではなく、ほんの少し徳が得られるといったニュアンスなのです。
三文の「文」とは、江戸時代のお金の単位のこと。江戸時代では、金貨、銀貨、銭貨が使われましたが、そのなかでも一文銭は最低額の貨幣でした。そのため「三文」は、ことわざや慣用句では「きわめてわずかな金額」という意味合いで使われます。江戸時代は長い年月の間に貨幣価値が大きく変動しているので、「三文」が現在の価格でいくらかなのかは難しいところなのですが、一説では90~100円程度といわれています。
例えば、「二束三文」とは「(草履を)二束売っても三文にしかならない」ということで、数が多くても値段が非常に安くて値打ちがないこと、ほとんど利益が出ないこと。また「三文判」といえば出来合いの安い印判のことですし、「三文芝居」は三文程度の価値の芝居、つまり金を払う価値もない程度の低い芝居という意味です。
もともとは、「早起きしても三文ほどの徳しかない」という使われ方をしていたという説もあります。しかし「長寝は三百の損」という寝坊を戒める言葉もあり、早起きと長寝の差は大きいと昔から考えられてきたことがわかります。
また、「三文」が「わずか」を意味する言葉であったとしても、そこで得られるのが「徳」というところが、このことわざの奥深さといえます。「徳」とは、立派な行いや品性、あるいは神仏からの加護、恵みを指す言葉です。徳は、積み重ねることで人の身につくもの。このことわざは、良い行いを続けることで品性が身についていくことや、恵みを重んじて生きることの大切さを伝えてくれているので、早起きは健康にもつなるもの。1日の充実を図り、日々の小さな恵みにも感度を上げ、三文の徳を積み重ねる生活を続けたいものですね。
幸運?それとも不運? 「犬も歩けば棒に当たる」

いろはがるたの1番最初の札でもあることわざが、「犬も歩けば棒に当たる」ですが、その教訓が意味するところとなると、意外と知らない方もいるのではないでしょうか。
問. 「犬も歩けば棒に当たる」のことわざの真意とは?
2. 何かをしているうちに思いがけない幸運にあうこともある
3. 1と2の両方
正解は、3の「1と2の両方」です。本来は1の意味で、犬がうろうろしていると、人に棒でたたかれるかもしれないことから、何かをしようとすると思いがけない災難にあうものだ、という例えでした。また、じっとしていられないことを戒める教えでもあります。しかし江戸時代には、出歩けば「思いがけない幸運にあう」ことのたとえとしても使われ、現在の辞書では1と2の両方の解釈を紹介しています。
おもしろいことに、外国にも“The dog that trots about finds a bone.”は「駆け回る犬は骨を見つける」という同様のことわざがあるのです。
何かしら行動をすれば、良いこともあり、悪いこともある、というこのことわざ。正反対の2つの意味を持つがゆえに、人生の側面を見せてくれるようで、味わい深いことわざですね。
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