せたがや相談室~夏の不調~|第3回「脱水症状」とは?その症状と対策
体調がイマイチだな、病院に行ったほうがいいのかな?ちょっとした体の不調は、なかなか人には相談できないもの。そこで今回は、消化器内科、消化管内視鏡、予防医学を専門にされている近藤慎太郎先生に、「夏の不調」をテーマに、夏場の体調管理についての心配や疑問、毎日を健やかに過ごすためのアドバイスをうかがいました。
- ●今回担当の専門家
-
近藤慎太郎 先生
日赤医療センター、東京大学医学部付属病院を経て、山王メディカルセンター内視鏡室長、クリントエグゼクリニック院長などを歴任。消化器内科、消化管内視鏡、予防医学専門。年間2000件以上の内視鏡検査・治療を手がけ、これまで数多くのがん患者を診療する。
まず、脱水症状には原因や症状の違う3種類があることを知っておきましょう
脱水とは、簡単にいうと「体の中の水分のバランスが崩れる」こと。水分の浸透圧(体内の水分濃度を一定にするために水分が移動する力)の高低によって、次の3種類に分けられます。
一般的にイメージしやすい、熱中症や汗のかき過ぎなどで起こる脱水のこと
・等張性脱水
下痢や嘔吐などにより、本来体内で保っておくべき水分が排出されて起こる脱水のこと
・低張性脱水
水分は不足していないものの、電解質(イオン。細胞の浸透圧を調整するなどの働きがある)が不足して起こる脱水のこと
いずれも家の中で起こる可能性がありますが、無意識という意味で要注意なのは低調性脱水です。例えば高張性~等張性脱水になった際、水だけを大量に飲んでも、塩分などは不足したままなので、引き続き低調性脱水を起こしやすいのです。
また、脱水症状のひとつとして手足が冷たくなることがありますが、これは低張性脱水に多いといわれています。脱水状態にならないように水分をたくさん摂りすぎると、体内の塩分濃度が低くなって手足が冷たくなることがあるのです。
ただ「水・飲み物を摂る」だけではなくきちんと選んで飲みましょう
つまり、家の中での脱水を予防するためには、「ただ水を飲む」「なんでも飲み物を摂る」だけではだめだ、ということです。特に、水分が足りていない意識がある場合は、経口補水液やスポーツドリンクも適宜とりまぜて摂取しましょう。ただしこれも飲みすぎると糖分が過剰になってしまいますから、気をつけたいところです。
普段の生活では、お茶やコーヒーなど、カフェインを含む飲み物も要注意です。カフェインには利尿作用がありますから、せっかく摂った水分を体外へ排出してしまいます。
大人は1日1.5リットルの水分を摂るのが望ましいといわれていますが、カフェイン入り飲料をがぶがぶ飲んで、その分を差し引いて計算するとなると、収支が分かりにくくなってしまいますよね。そこで、カフェインを含む飲み物はできれば控えめにし、加えて「カフェインの入ってない水分をどれぐらい飲んでいるか」を意識するようにしましょう。水分をどれくらい摂ったかチェックする意味でも、手帳やメモなどに飲んだ量の記録をつけてみるといいかもしれません。また、アルコールも利尿作用が高いので、水分補給にはならないと考えておきましょう。
自分の感覚や客観的な指標も参考に「体の声を聴く」ようにしましょう
熱中症での脱水や、下痢・嘔吐による脱水は年齢に関係なく誰にも起こる可能性があります。しかし体の感覚が衰えていたり、薬の影響などで変化に気づきにくいことも。家の中で脱水症状を起こしやすいのは高齢者であり、特に盲点になるのは、就寝中かもしれません。
エアコンの設定温度の目安は「28℃」といわれますが、同じ設定でも家の構造などで実際の温度は違ってくると思いますし、就寝中にエアコンを使うのが嫌いな方もいるでしょう。そこで、自分の体の声を聴くように心がけてみてください。「気持ちいい環境かどうか」、「昨日と比べてどうか」は人によって全然違うはず。そういう感覚をちゃんと意識することは、とても大事なことだと思います。
そこで、エアコンがちょっと効きすぎると思ったらドライ(除湿)運転にしたり、扇風機を併用して体感温度を下げたりしてみてください。
体の声を聴く方法は、心地いいかそうでないかを意識する他にもあります。
例えば、高齢の方であれば毎日血圧を測っている方も多いと思いますが、脱水状態になると血管中の水の濃度が減るので、血圧はてきめんに下がります。また、トイレに立つ回数や尿の量が減って、色が濃くなります。こういったことも体の声が現れるマーカーとして、「いつもと違うぞ」という時は見逃さないスタンスが大事ですね。
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