語源・由来|漢字の成り立ち 「技」「命」
古代中国で生まれた文字、漢字。その字の成り立ちは、象形・指事・形声・会意・転注・仮借の6種類に分類されます。由来を紐解いていくと、先人の創意工夫がこめられていて、よくできていておもしろいのです。 例えば「象形文字」は絵文字からの発展によって生まれたと考えられています。「指事文字」は位置や状態の概念を表していて、「形声文字」は意味を表す文字と音を表す文字の組み合わせ。「会意文字」はいくつかの象形文字や指示文字の組み合わせです。 今回は、「技」と「命」のふたつの漢字について、その成り立ちをご紹介します。
古代中国で生まれた文字、漢字。その字の成り立ちは、象形・指事・形声・会意・転注・仮借の6種類に分類されます。由来を紐解いていくと、先人の創意工夫がこめられていて、よくできていておもしろいのです。
例えば「象形文字」は「山」や「川」など絵文字からの発展によって生まれたと考えられています。「指事文字」は「上」「下」のように位置や状態の概念を表していて「形声文字」は、意味を表す文字と音を表す文字の組み合わせ。
正反対の意味で同じ成り立ちを持つ漢字
「会意文字」は「林」のように、いくつかの象形文字や指示文字の組み合わせです。
このように成り立ちを知ることで、漢字はいっそう味わい深く使えるようになるでしょう。今回は、「技」と「命」のふたつの漢字について、その成り立ちをご紹介します。
<技>手に枝を持ち、たくみにふるまうさまをさした言葉
「技」は「てわざ、技芸、技術」もしくは「うでまえ、はたらき、技能」を意味する漢字です。「手」と「支」のふたつの象形文字からできている会意文字であり、また、意味を表す「手」と音を表す「支」から成り立つ形声文字でもあります。
手偏の「手」は、五本の指のある「手」のカタチから作られた象形文字で、そのままの「て」を意味します。つくりの「支」も象形文字で、竹や木の枝を手にする形にかたどり、「ささえる」「枝を払う」「わける」という意味です。このふたつの文字を組み合わせ、枝を手に持ちたくみにふるまう様子を表し、「技」を意味するようになりました。
柔道や剣道、相撲など武道の「技」が決まったときや、また熟練の職人の手仕事を「技」と称するときを思い出してみてください。手や道具をたくみに操る様子は、言葉の成り立ちを彷彿とさせるような気がしませんか。
<命>ひざまずいて神の意をきく姿からできた言葉
「命」という漢字は、「生命」の意味で使う印象が強くありますが、「言いつける」「おきて」という意味もあります。
「命」という漢字は、「口」と「令」のふたつの字からなる会意文字。「令」は上部が冠の象形、下部は人がひざまずいている象形といわれています。人がひざまずいて神意を聞くさまをかたどっており、そこから「言いつける」という意味になったのだそう。
もうひとつの要素である「口」は、顔にある口の象形といわれていましたが、漢文学者の白川静博士によって、「サイ」という「神に捧げる祝詞を収める器」の形を示す文字、つまり呪具の象形という説も提唱されています。
「ひざまずいて神意をきく人」へ「祝詞を捧げる」意味合いを付したのか、「くち」を用いて言いつける意味合いを付したのか……文字の謎のひとつです。
いずれにしても、「命」という漢字には神の命令という、有無を言わせぬ重さが含まれます。人生に、ときに子孫誕生の喜びをもたらし、ときに病や事故、災害で無情に奪われる悲しみをもたらす――。人にはどうにもできない「命」の始まりと終わりに、古代の人は「神」からの「言いつけ」を感じ取ったのでしょうか。
命は天からの授かりものであることを改めて感じつつ、日々を大切に生きていきたいものですね。
今回は、ふたつの文字が組み合わさって生まれる会意文字のおもしろさをお伝えしました。謎をはらんだ象形文字の成り立ちとともに、漢字の源を紐解くきっかけとなりますように。
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