文化|「母の日」 母へ感謝の気持ちを伝える記念日
5月の第2日曜日といえば「母の日」。実のお母さんはもちろん、パートナーのお母さん、母親のように慕っている年上の女性などにも、この日に感謝の気持ちを伝えるという方は多いのではないでしょうか。今回はそんな「母の日」の由来や、カーネーションを贈る慣習などにまつわるエピソードをご紹介します。
目次
5月の第2日曜日といえば「母の日」。実のお母さんはもちろん、パートナーのお母さん、母親のように慕っている年上の女性などにも、この日に感謝の気持ちを伝えるという方は多いのではないでしょうか。今回はそんな「母の日」の由来や、カーネーションを贈る慣習などにまつわるエピソードをご紹介します。
「母の日」のルーツはアメリカの心やさしい少女にあり
世界では、国ごとに時期も由来も異なるさまざまな「母の日」が制定されています。1年を通してみても、2月から12月まで毎月必ずどこかの国の「母の日」があるのです。
また次のように、母の日の慣習にも国によってそれぞれ違いが見られます。
・オーストラリア・・・母の日にはカーネーションではなく「菊(ガーベラ)」を贈りレストランで朝食をとる
・韓国・・・母の日、父の日ではなく「父母の日」がある
・アルゼンチン・・・家族や母子でなくても知り合いと「母の日おめでとう」と言い合う
世界の国々でも花のプレゼントは母の日の定番ですが、ミニバラ(フィンランド)や白いジャスミン(タイ)など、カーネーション以外の花を贈る国も多いようです。
5月の第2日曜日、日本の「母の日」のルーツは、20世紀初めのアメリカにあります。明治40年(1907年)、母親を早くに亡くした少女アンナ・ジャービスが、母の没後2年目に、教会で偲ぶ会を設けたというもの。その際、アンナの母が好きだった白いカーネーションを参加者へと手渡したのが、「母の日の花といえばカーネーション」という定説が広まったきっかけなのだとか。
ちなみに、「母の日」の花といえば白よりも「赤いカーネーション」が定番ですが、これは「母親が亡くなっているなら白、存命なら赤いカーネーション」という本来の慣習が、母親を亡くした方への配慮からどちらも赤いカーネーションになったのだそうです。
日本の「母の日」は青山学院から広まった
この「母の日」を日本で広めるきっかけとなったのは、青山学院のルーツとなった学校でした。明治時代から昭和初期、青山学院の前身である海岸女学校・青山女学院に関わった3人の女性宣教師たちが、アメリカで生まれた「母の日」の由来や行事について伝え聞き、日本にもこの記念日を広めようと尽力したのです。日本で初めて「母の日」の行事が行われたのは、アンナ・ジャービスが母を偲ぶ会を設けたわずか6年後の大正2年(1913年)のことでした。ちなみに、現在のように5月の第2日曜日の「母の日」が広く一般的な記念日となったのは、日本初の「母の日」から第二次世界大戦を経て35年以上も後のことです。
実は「母の日反対派」に転じていたアンナ・ジャービス
さて、「母の日」という素敵な記念日を世に広めることとなったアンナ・ジャービスですが、実は後年になって、自ら「母の日」に反対する運動を繰り広げています。というのも彼女は、母に感謝する日であったはずの「母の日」が、年々様変わりしていくことに、とても心を痛めていたのです。家族が母と過ごし、日ごろの感謝の気持ちを伝えるはずだったその日には、いつしか花やプレゼントを贈る、食事をするといった華やかなイベントが加わるようになり、彼女は「子どもたちの母への思いは商業的に利用されるようになってしまった」と感じていました。そして本来の意味での「母の日」を取り戻そうと、生涯働きかけ続けたのです。
「母に感謝する気持ち」が何よりも大切
アメリカや日本で広まっていった「母の日」のように、とっておきのプレゼントを用意したり、会食の席を設けて楽しい時間を作るのも、この日の素敵な過ごし方ではありますが、母の日本来の目的は、アンナ・ジャービスが生涯をかけて訴え続けた「母に感謝する気持ちを伝える」ことにあります。
時には、華やかなイベントやプレゼントで「母の日」を祝うだけでなく、手のかかる家事をお母さんに代わって家族が行うことでお休みしてもらったり、親子でゆっくり話をする時間を作ってみたり、心を込めた手紙を用意するなどしてみてはいかがでしょうか。また、先に旅立っていったお母さんのことを偲び、想い出とともにあらためて感謝するのもよいかと思います。誰もが、お母さんへの思いを確かめる大切な日にしたいですね。
関連する投稿
ゴールデンウィークから初夏にかけては、陽気に誘われて過ごしやすい時季です。そこで今回は、これまでご紹介してきた旅記事のなかで、「丸山千枚田」「奥入瀬渓流」「尾瀬国立公園」などの、新緑が美しい自然豊かな観光地や散策ルートをご紹介します。
キャッシュレス決済を利用する方が増えるなか、最も使用されているのがクレジットカード。しかし、これまでクレジットカードをあまり使用されていなかった方や、これからクレジットカードの使用を考えている方には分からないことも多いのではないでしょうか。そこで今回は、いまさら聞けないクレジットカードの使い方や、注意したいポイントについてご紹介します。
語源・由来|「お雑煮」「羽根つき」 正月にまつわるめでたい由来
季節ごとの習わしや行事食は多々あれど、中でもお正月にまつわるものは、多く現代に残っています。今は簡略化されてしまって、そもそもの由来に思いを馳せることは少なくなっているかもしれません。今回は「お雑煮」と「羽根つき」が始まった理由や、言葉の意味をご紹介します。
イベント事のマナー|年の前半の締めくくり「夏越の祓」で、後半も健やかに
6月の終わりに行われる「夏越の祓(なごしのはらえ)」は、半年分の穢れを祓って夏を迎え、残りの半年を健やかに過ごすための神事。日本各地の神社で行われ、基本的にどなたでも参列できます。今回は、年の前半の締めくくりである夏越の祓について、また、茅の輪(ちのわ)くぐりのふるまい方についてご紹介します。
散策|美しい渓流や苔に癒やされる川沿い散策「奥入瀬渓流」(青森県)
十和田八幡平国立公園(青森県)を代表する景勝地のひとつが「奥入瀬(おいらせ)渓流」です。十和田湖から流れ出る奥入瀬渓流は、国指定の特別名勝、天然記念物にも指定されています。四季折々の自然が満喫でき、遊歩道もしっかり整備されています。高村光太郎作の乙女の像でも知られる十和田湖と合わせての散策がおすすめで、ガイド付きのネイチャーツアーも開催されています。「星野リゾート奥入瀬渓流ホテル」で大人で優雅なリゾートも楽しめます。
最新の投稿
朝食は、1日のスタートを切るための大事な栄養源です。できるだけ栄養バランスのとれたヘルシーメニューを摂りたいものですが、毎朝続けるのはなかなか難しいと感じている方は多いのではないでしょうか。今回は、少しの工夫で朝食をヘルシーにするコツをご紹介します。
コミュニケーションの大切さや、心身の健康維持に効果的なポイントをご紹介します。
春の旬の食材が味わえる「郷土寿司」。古くから保存食としてや、お祭りやお祝いの席で食べられてきた趣のある料理で、地域ごとにさまざまな個性を持っています。今回は、長く愛され続けてきたその歴史や味わいについて詳しくご紹介します。
華やかで愛情を表現する花の代表格といえる「バラ」。バラは5~6月に咲くのが一般的ですが、品種によっては1年を通して楽しめるのも特徴です。今回は、バラが咲く時期やバラの花言葉、さまざまな健康効果も期待できるバラ茶やバラの香りについてご紹介します。
日々の食卓を彩る、上品な味わいの「お吸い物」。起源は奈良時代まで遡り、当時の文献にはお吸い物の元となった「羹(あつもの)」の記載が残っています。室町時代には「吸い物」と呼ばれるようになり、江戸時代には具材の数が増え、季節ごとに趣向を凝らしたお吸い物が登場したといわれています。今回はお吸い物の基本から主役となる具材、お吸い物をいただくマナーをご紹介します。